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私は。

蜷川幸雄の「コリオレイナス」を観ました。
Barbicanで蜷川作品のシェイクスピアを観るのは
「ハムレット」(真田広之&松たか子)、「リア王」(真田&ナイジェル・ホーソーン)に続いて3度目です。




舞台は、紀元前5世紀のローマ。
国家への功績があるものの、民衆を愚弄する態度と母親への異常な愛情ゆえに、
悲劇を招いたローマ将軍コリオレイナス(唐沢寿明)の姿を描く。
コリオレイナスは、敵国との戦いを勝利に導き、一方では“武人の華”と称えられ、
また他方では裏切り者として“民衆の敵”と罵られる。(チケットぴあ)


比較的人気知名度の低いシェイクスピア作品ですが
以前論文を書いたので、ちょっと愛着があるの私。

舞台のローマは、シェイクスピアにありがちな
帝国としてのローマではなく(例:ジュリウス・シーザー)
まさに王国から共和国に変わろうとしている瞬間の、政治的に不安定なローマです。


古き良き時代のローマの美徳を体現しているようなコリオレイナスは
優秀な将軍でありながらびっくり頭のカタイ男で、
民主制に移行していくローマ政界になじめず
祖国からはじき出されてしまうのですが。


タークィン追放後のはずのローマの人たちは
蜷川バージョンではなぜか和風装束。
それも純和服ではなくちょっとチンギス・ハーンが混ざってたりするんですが、
さすが日本の俳優陣、袴をつけると背筋がしゃんと伸びて
まあ姿勢のよろしいこと!

特に唐沢コリオレイナスは常に地面と直角で、
武人特有の

曲げてたまるか背筋と信念。

という柔軟性のなさが出ているようでした。



「向こう傷」や「高潔な自殺」の概念といい、古代ローマと日本の武士道には
通じるものがあると昔から思ってましたが
なるほど思想は装束にも表れるのだな。と思いました今回。


この作品の軸は、Patricians(貴族)Plebians(民衆)
二大勢力の政治的対立ですが、これを表すのに舞台で使われたのが
タカラヅカもかくやという大階段。

貴族制と民主制の優勢劣勢が変わるたびに
階段を文字通りドドドドドと駆け上がり、
ゴロゴロ転げ落ちる
のです。


でも結局どちらが勝つのかは微妙。
シェイクスピアのスタンスも微妙。
階段の下があってはじめて上もあるわけで、貴族も民衆も
お互いがいないとそれぞれ存在の定義が成り立たない。
そんな曖昧さもあって、この作品は右翼左翼、ファシズム・共産主義、
どちらのプロパガンダとしても利用されてきたものの、
唯一この作品内で実感できるのは
結局集団とは個人の集まりであり、ゆえに

政治力なんてひとえに風の前のチリですよ、と。
国なんて、個人の力も民衆の力も及ばぬ方向へ進んでいくもんですよ、と。

なので選挙前の政治家がひとつ芝居を観るなら
私はこれをプッシュしておきます。


一番すごいと思ったのはー、緞帳(?)がになっていて、
上演前や幕間にそれが閉まると客席が全部映って自分が見えるの。
視覚的に意識せざるをえない、客席イコール民衆の図。

「ちょっとそこのアナタ。そう、アナタ。

どうよ今の。一Plebianとして。」

と聞かれてるような気になって、
「そんな滅相もございません!」と言いそうになります。(弱ー



にしてもコリオレイナス。
私はこれ、色んな意味で属性を捨てられない人たちの悲劇だと思う。
父、母、息子、娘、夫である前に、それぞれが
ローマ人である自分を、ヴォルサイ人である自分を。
執政官である自分を、護民官である自分を。


"I would I were a Roman, for I cannot, / Being a Volsce, be that I am"(I.x.4-5)


コリオレイナスはローマを追放されるとき、
「(ローマよ)私はお前を追放する!」(III.iii.127)と言い、
いや、追放されてるのお前の方だから。と思うんですが(主語と目的語が逆)、
この時点で本人はもう、母国ローマと個人としての自分の区別ができなくなっている。
その後、「どこか別の世界」(IV.i.36)を目指して彷徨い
ヴォルサイ人にどこで暮らしているのかと聞かれれば「天蓋の下で」(IV.v.38)と答え、
特定の国に忠誠を誓わない人間になってみるも結局はローマ人。
ローマに帰属できない以上は滅びるしかないのです。
(昔書いたエッセイ読み返して復習した人)


仮に属性を「帝国軍人」「武士」「代表取締役」「エリート商社マン」
とかに変えてみても主題は変わらないので、
やっぱり普遍的で時代を選ばないテーマですね。


ところでアミーゴが、
「お母さん出てきてコリオレイナスがコロッと決心を変えちゃったのには
エエェェエーって感じだったけどねー」

(母に懇願されて、簡単にローマに攻め入るのを断念)
と言ってましたが大丈夫。あれは、

全員でドン引きするシーンだから。
ハムレットもびっくりのママ至上主義。


あと、自分の居場所を求めてさすらうコリオレイナスを、
「なんか私たち(帰国)みたいだねー」とも。うんそうだね・・・。


でもあれだ、国と国との板ばさみになっていよいよ発狂しそうになったら、

私は、大地の子です。@陸一心

とタンカを切るのも手だと思うよ?


・・・はっ、気付けばなんか語ってしまった!
しかもすごく中途半端に!Σ( ̄□ ̄;)


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Mayumi reviews」カテゴリの記事

コメント

おぉぉっ!!
これ自分も見ました!!
舞台食わず嫌いだったのですが、友人からタダ券もらったので初体験(なにせ、蜷川←になかわをひるかわと読んでたくらい食わず嫌いです)

あまりに早口で7割くらいしか聞き取れなかった++
韓国人の友人と一緒に見に行ったのですが、彼女は爆睡してました。。。

とりあえず舞台見るときはあらすじくらいは下調べしとくべし、発見です
でも良かった
また見に行きたいものです


肝心の「コリオレイナス」の感想は。。。。大衆って怖いのね。。。くらいかな。。

投稿: | 2007年5月31日 (木) 23時05分

コリオレイナスで食わず嫌いが治ったらびっくりです(え
シェイクスピア作品の中でもマイナーだし
やっぱりちょっとマニア向けですよね!

でもまたタダ券もらって再チャレンジしてください!

投稿: まゆみ→匿名さん | 2007年6月 1日 (金) 19時50分

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