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硫黄島からの手紙

※ネタばれ注意報※

冬、一足先にこれを観たまゆみ妹(24)が、

「早くテレビで歌ったり踊ったりしているニノを見ないと
永遠に同情してしまいそうだ!」

と言っていたので。

小さい頃「はだしのゲン」を観て以来、
戦争物は私の最大のトラウマなので。
「ちいちゃんの影おくり」とか「石うすの歌」とか
「ひとつだけの花」とか「タコになったお母さん」とかもう…もう…

心して観てきました。「硫黄島からの手紙」。


Letters_from_iwo_jima_ver8.jpg


色彩禁止令が出てるのか?と思うくらい
どこまでも汚い褐色の画面。


戦闘描写はすさまじく凄惨で、

洞窟でのゲリラ戦とか手榴弾自決のシーンでは
わざと焦点を合わせないようにしたり、うっすら半目越しに画面を観たり
前の人の後頭部を眺めたりして、なかなか忙しかったです。だって!だって!


昔、教科書で戦争を題材にしたお話が出るたび、
「こうゆうのは嫌なのダメなの読まないの!」と耳を塞ぐ私に、母が
「じゃあこれは戦争は怖いんです、気持ち悪いんです、って言うお話だと思うの!?」
と怒ってましたが、思う。思うよ。

未来に語り継ぐとか犠牲を忘れないためにとか色々理念もあるだろうけれど、
第一リアクションはひとまずそれだ。

それにおこがましいことこの上ないですが、
戦時中のメンタリティみたいなのも
分からないでもない気がしますね。


明日いきなり同じような戦争が始まったとしたら、
インターネットもプラズマテレビもDNA鑑定もあるこの時代に、
それでも私は千人針を作ると思う。
保身のために日章旗を玄関に飾るくらいはするかもしれないし、
赤痢の人には申し訳ないけど近づかないよ。


だって死にたくないから。死なせたくないから。


なので、西郷(ニノ)の生きることへの執着が
「俺たちは日本帝国に騙されている!お国のために犬死になんてたまるか!」
という、当時にはありえなさそうな前衛的な思想から来るものではなく、
あるときふと「ちょ、タンマ!俺やっぱ生きたい!生きたいかも!」
という衝動的なものだったというところが妙にリアルでした。


栗林中将(渡辺謙)の、「無駄死に反対&欧米技術・力量の警戒」というスタンスは
当時の日本側の常識から大きく外れているところも含め
とても龍馬的でした。それだけに結末がとても悲しい。
最後、色んなものをシャベルでメチャメチャに壊したかった
西郷が可愛そうです。


テクニカルな話をすれば、
あえて欧米視点で観てみると、いくつか説明が足りないかな?
と思う点がありました。


★硫黄島はサイパンと日本本土のちょうど中間点にある島であること。

★+飛行場施設も整っているので、本土空爆のためにもアメリカ軍にとっては
硫黄島征服は必須の課題であったこと。

★同じ理由で日本軍にとっても硫黄島死守は必須の(以下同文)。

★but小さな島なので、擂鉢山を占拠されるイコール島自体が陥落、だということ。

★かの有名なカミカゼ精神が根強い日本軍において、栗林中将はあえて
玉砕を禁止したこと。

★5日間で終わる、と楽観視していたアメリカ軍の予想を裏切り、
硫黄島の戦いは一ヶ月以上も続いたこと。

★そしてその戦いは太平洋戦争史上最大の激戦で、唯一アメリカ軍の死傷者が
日本軍のそれを上回った戦いだったこと。


私もあとで調べて分かったことですが、こういうポイントをもう少し
強調すれば、栗林中将の人物像にも立体感が増しただろうし
洞窟篭城の場面もさらに強烈なものになっただろうと思います。


それと、どこかで見かけて気になった記述がひとつ。
「信念を貫けばそれが正義になる」という重要な台詞について、
「いかんこれではテロリストにも適用されてしまう!」
という意見がありました。

…ほんとだ!!!( ;゚Д゚)

あからさまな誤訳ではないですが
ちょっと意図がずれてしまっていますね。
正義という言葉は主観が入りすぎる感じがするので、
できれば避けたいところです。

確か原文は"always do the right thing because it is right"だったはず。

これはそうだなあ、直訳すると、

「正しいからこそ正しいことをしなさい」。
「正しいことは、その正しさゆえに実行しなさい」。

こんな感じ?ようは、

人に頼まれたからとか、そうするべきだからとか、
そのように教えられたからではなく、
その行いの正しさを理由に、正しいことをしなさい。

ということです。うん、これじゃ台詞にならないね…。


映画館のトイレで、イギリス人の女性に
「映画は楽しめた…?」と遠慮がちに聞かれたのですが
いい映画だとは思ったけどさすがに楽しんではない…かな…。


戦没者の想いを忘れるなとか、
彼らの犠牲の上に今の日本があるとか、
今さら私が言うまでもなく。
たくさん考えさせられました。これからもたくさん考えます。


それから、犬を撃った憲兵隊員は
ある朝起きたらムカデかなんかになっているといいなと思います。



大学生ブログ選手権
↑私だったらアッシュは長野の山奥に放すよ。(長野の人ごめんなさ…)

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コメント

こんにちわー。

「硫黄島からの手紙」みてないんですが、「父親達の星条旗」はみました。(「父親達・・・」を見て、あまりにも衝撃が強すぎて「硫黄島・・・」見れなかった。スプラッターですよね。ぶるぶる。)

まゆみさんが説明不足かも??と言っておられた点は、「父親達・・・」を見てれば分かりやすかったかもと思いましたー。

投稿: | 2007年3月15日 (木) 09時21分

こんにちは。

歴史を研究、叙述し、伝えていく立場の者として、いろいろと参考になるご意見、(勝手に)ありがとうございます。

訳において、「正義」という言葉を使用すべきかどうかについてのご指摘、おっしゃるとおりだと思います。学問の世界だと、おそらく批判の嵐に遭うことでしょう(汗)。あくまでエンターテーメントの世界だから、許容されている?!....... 
似たような問題アリ!?の単語としては「聖戦」があります。人を殺しあうのに「聖」も「ク▲」もなかろーもん!と僕は思いますが。 
あと「戦争」と「大量殺人」の違い、ここにも、ある意味、正当性やら主観が介入してくるので、要注意です......。

PS: ムカデになった憲兵隊、きっと今頃泣きながら、大後悔してますよ!(笑)

投稿: onigiri15 | 2007年3月15日 (木) 20時25分

★匿名さん

こういうの、ある意味ホラージャンルですよね;
そういえば「硫黄島」と「父親たちの」は対になっていたんでした。忘れてたー。両方観ないと比較対象がないですもんね。でもちょっと今のところはおなかいっぱいです・・・

★onigiri15さん

どうですか、historianの目から見て!?(笑)
なかなか難しいテーマですよね。

投稿: まゆみ→コメント返し | 2007年3月15日 (木) 21時00分

こんにちはー、時々拝見してます。私も80年代に英国にいたので…。

まあ、普段はこんな話に興味ないと思うのですが、ちょっと註釈をさして下さい。

※犬を殺した憲兵→この部分、実際の憲兵をまったく知らないファンタジーで、SAYURIみたいなもんでした。野戦でもないのに、平時の国内で国民の財産を破損したら、刑法違反で軍法会議行きです。シナリオライターの想像にすぎず、こんな憲兵いませんからご安心を。それから、犬殺しの目上に従わなかったら硫黄島に送るなんて人事ありません。

※戦争が続く以上、徹底的に抵抗することは非常に意味があるので(単に飛行場だけではない)、現に戦後に多くの好条件を引き出しています。ということは当時の人も充分に知っていたのです。みんな今の日本人とそんなに変わりませんよ?

※あなたの「思う。思うよ。」って反応は全く正常だと思います。

※本物の日本軍人に一番似てるのは、脱走兵を撃って、其の後自分が犠牲になって部隊を掩護したあの人。実は今の自衛隊員とそっくり。

※トイレでの話に思わず「ハハハ!」、日本人の反応を知りたいんでしょうね!

投稿: ○□△ | 2007年3月21日 (水) 00時51分

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